オゾン水とは
オゾン水は、オゾン(ガス)を水中に溶存させたもので、オゾンガス同様に強い酸化力により消毒・殺菌、脱色、脱臭などに利用されている。長い利用の歴史および広範な使用実績を有するが、次亜塩素酸ナトリウムなどのように家庭内で繁用されるまでには至っていない。残留性が無いことが長所ではあるが、実際の使用時にはこれが短所になっている。しかし、オゾン水は毒性がほとんど認められないため、身近な生活環境において消毒・殺菌、脱臭、脱色、医療効果などを有するため広範囲な分野で利用されている。

最近では、皮膚科、眼科、歯科、獣医などの医療分野においても、医療機材の消毒に限らず、患部の消毒・殺菌などにも使用されている。震災時には、ボランティアの手指洗浄や、介護施設において褥瘡の消毒・洗浄に使用された例も報告されている。

オゾンの殺菌メカニズムは、抗生物質とは異なり細菌を構成する生体成分を酸化し、破壊するため耐性菌を生じないといわれている。
オゾンは細胞壁や膜を構成する脂質やタンパク質の易反応性部位と反応して損傷させ、さらにオゾン分子が細胞内部に侵入して易反応成分と反応が進む過程で殺菌されると考えられている。


オゾン水の利用分野の具体例
食品分野
(1)カット野菜の消毒・殺菌、鮮度保持
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、カット野菜の消毒・殺菌に長年使われてきたが、残留塩素臭が強く、水によるリンス洗浄が必要なことから、オゾン水(溶存オゾン濃度: 2〜10 mg/L)による殺菌・消毒、洗浄に使われるようになった。オゾン水の殺菌力は同じ濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較すれば強く、リンス洗浄が不要で、パリッとした食感が長く保てるなどが長所である。しかし、溶存オゾンがカット野菜洗浄時に、気中に放散しないシステムが必要であり、大容量の洗浄器ではブース、オゾンガス吸引ファン、オゾン分解装置を備えたものもある。
(2)食品加工機、搬送コンベア、テーブル、床などの消毒・殺菌
食品加工工程において、製品としての食品への汚染を防止するため、オゾン水は食品の加工機、搬送コンベア、テーブル、床等の消毒・殺菌に用いられている。
(3)ペットボトルや天然水の消毒・殺菌
加熱殺菌の代替としてペットボトル、リターナブル瓶、水サーバの流水路の消毒・殺菌などにオゾン水が使われ始めている。


医療分野
(1)歯科
機材の洗浄・消毒、口腔内のうがい洗浄、ドリルの冷却水、インプラント手術時の消毒水としてオゾン水(1〜4 mg/L)が利用されている。
(2)眼科
眼病治療時および白内障など手術時の眼の洗浄にオゾン水(4 mg/L)が利用されている。
(3)介護施設
入院患者の褥瘡の洗浄消毒、またノロウイルスやレジオネラ属菌による感染対策としてのトイレ、浴槽の洗浄消毒にオゾン水が利用されている。
(4)内視鏡の洗浄消毒
内視鏡などの医療機器を使用した後の洗浄消毒を目的にオゾン水が利用されている。
(5)獣医科
ペット(犬、猫)の外耳炎洗浄や皮膚病・創傷部位の洗浄にオゾン水が利用されている。


一般家庭、その他
(1)ランドリー
洗濯物の洗浄工程においてオゾン水が利用されている。
(2)革製品の洗浄
皮革製品の製造工程においてオゾン水が洗浄工程において用いられる。
(3)うがい、手洗い
家庭用のオゾン水生成器で生成したオゾン水を用いてうがいや手洗いが行われている。
(4)運動靴などの脱臭
オゾン水は、使用後の運動靴を洗浄・消臭を目的として用いられる。



日本医療・環境オゾン学会 環境応用部会/オゾン水研究会資料引用